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LOST MEMENTO 第五章~メルティー~2

そこは誰かの部屋・・・沢山の人形に囲まれたとても可愛い部屋

恐らく小さな女の子の部屋なのでしょう・・・

メルティーは人形に手を伸ばそうとしますが、人形を掴むことが出来ません

「あれ?おかしいわ・・・」

メルティーは自分の掌に目をやりますが、そこには何も映りません・・・

「え?これは・・・私の手は?・・・」

一歩前へ出ようと歩を進めますが、鏡の境界線より前に進む事が出来ません

「どうして?・・・」

メルティーは今自分が置かれている状況が理解できません。

 

部屋に女の子が入って来ました。

5歳位の女の子でしょうか・・・とても可愛いお姫様のような洋服を着た女の子

「貴方はだれ?ねえ?私はメルティー・・・貴方は?」

メルティーは女の子に訪ねますが、女の子にメルティーの声は届きません

「お願い・・・私はここよ・・・お願い・・・返事をして・・・」

メルティーは必死に話しかけます。

すると女の子が振り返り鏡を覗きます。

届いた!

そう思ったメルティーはまた女の子に話しかけます。

しかし、女の子は鏡の前に立ち、髪をとかすとそのまま部屋を出て行ってしまいました。

「なぜ?どうして?私はここにいるのに・・・お願い・・・誰か気づいてよ・・・」

メルティーは泣き出してしまいました。

 

暫くすると女の子が部屋に戻って来ました・・・

メルティーは必死に話しかけますが、やはり女の子は全く気づきません・・・

「もしかして・・・私の事・・・いや・・・私が見えないのかしら・・・」

少しだけ冷静になったメルティーは色々考えます。

そして自分を見ようと目線を下げますが、当然何も見えません・・・

「冷静になれ私・・・考えるのよ・・・」

メルティーは一生懸命に考えを巡らせます。

「きっと私は・・・何があったのかはわからないけど、実体の無い存在になってしまって

いるのね・・・なぜ・・・かしら・・・幽体離脱・・・とか・・・

声も聞こえてないみたいだし・・・鏡の境界線・・・・」

メルティーは何かを思い出しました。

 

「そう言えば昔話しで聞いた事があったわね・・・

LOST MEMENTOの何処かに入口があるとかなんとか・・・

え~っと・・・そう・・・鏡の世界の入口があるって

たしか伝説では鏡の世界には肉体を持ったまま行くことが出来なくて

精神だけの存在にならなくちゃいけない・・・」

 

・・・・・・・・・

 

「わたし・・・・今肉体が無いって事・・・かしら・・・

わたしの身体は?何処に行ったの?・・・え?

わたし・・・たしか・・・部屋で寝てたはずじゃ・・・」

メルティーは今置かれている状況は理解出来ましたが

なぜ、そうなったのか?

理解出来ません・・・それもそのはずです、寝ている間に精神と肉体をバラバラにされたのですから・・・

 

ハートのお城では、アリシアがジェイドと別れ応接間へ向かっていました。

「ただいま戻りました。」

と、応接間の大きな扉を両手で開きました。

中では騎士団の幹部たちが大騒ぎしていましたが、一斉にアリシアの方を向き

静まり返りました。

「・・・た、ただいま戻りました・・・」

 

「おーアリシア殿・・・戻られましたか。」

と声を発したのは騎士団長のキャスパーでした。

「キャスパー様・・・王様は?」

 

「あ、あぁ王は自室にて休まれておりますぞ、女王はそこの扉の脇の

ソファーに・・・」

そう言ってキャスパーが指を指した先には、眠っているような女王様の姿が

目に入りました。

その瞬間です、女王の身体がソファーからドサッと転げ落ちたのです。

 

「え?じょ・・・女王様・・・」

驚くアリシア

「じょ、女王・・・女王・・・」

キャスパーが大声を上げ駆け寄ると、手首に指を置き脈を図り、目蓋を開き

瞳孔を確認しました。

「し、死んでる・・・女王が・・・女王が・・・」

混乱するキャスパー

 

すると騎士団副団長のキャバリエが大声で叫びました。

「暗殺だー、城を、門を封鎖するのだ、急げ!」

冷静沈着なキャバリエはキャスパーの元へ駆け寄り

「キャスパー様王様の元へ、暗殺者はまだ城内にいるかもしれません

王の身が危ない、早く王様の元へ」

キャスパーは混乱し動く事が出来ません。

 

アリシアはハッと我に返り王様の部屋に走り出しました。

 

アリシアが二階へ駆け上がって来る足音を聞きジェイドは

ベッドから立ち上がり

「さてと、長居は無用だな・・・」

と言うと部屋の窓から飛び降りました。

 

アリシアは王様の部屋の前に立つと、ドアを力いっぱい叩きました。

 

ドンドンドン

 

ドンドンドンドン

 

 

「王様・・・王様・・・女王様が・・・女王様が・・・」

 

 

ドンドンドンドン

 

「王様・・・王様・・・」

 

全く返事がありません

 

「王様・・・」「王様・・・」

 

「失礼します。」

意を決したアリシアは王様の部屋に飛込みました。

 

「キャー」

アリシアは思わず大きな声を上げてしまいました。

そこには脇腹を押さえたまま、真っ赤な血の海の中心に王様が横たわっていたのです。

 

「お、王様・・・王様・・・」

当然返事はありません。

「お、王様―、アリシアこれはいったい」

冷静さを取り戻し、アリシアの悲鳴を聞いたキャスパーとキャバリエが

駆け寄って来ました。

 

「わかりません、私が扉を開けた時にはもう・・・

何度呼んでも返事が無いので、扉をこじ開けたのですが・・・

開けると王様が・・・王様が・・・」

とアリシアは涙を流し嗚咽混じりに答えます。

 

「兎に角、女王が殺され下の階ではパニックが起きている

今王様まで殺されていたとなっては、収集がつかなくなってしまう・・・」

キャスパーは必死に冷静さを保ち必死で考えを巡らせます。

 

「アリシア、おぬし確か変化の術を身につけておったな・・・

王様に化けられるか?」

 

「は、はい、私の記憶にある人に化ける事は可能ですが・・・まさか・・・」

 

「うむ、そのまさかだ、少しの間で良いのだ、混乱が落ち着くまで・・・」

キャスパーはそう言うとアリシアに頭をさげた。

 

「や、やめて下さいキャスパー様、解りました自信はありませんが何とか

やってみます。しかし、王様はどうされます?このままって訳にも行かない

ですよ・・・」

とアリシアは問いかけます。

「今王様の亡骸が見つかる事は避けねばならん

王様には申し訳ないが、地下牢に隠すしかあるまい・・・」

 

「王よハート国を守る為です。ご容赦ください」

キャスパーはそう言うと、キャバリエと共に王の服を剥ぎ

アリシアに手渡し、ガウンを羽織らせるとキャスパーが王を背負い

部屋にある隠し階段で地下に降りていきました。

 

アリシアはキャスパー達を見送り、床に魔法陣を書き王様の顔を強く

思い浮かべ呪文を唱えました。

魔法陣はゆっくり回転を始め、青白い光に包まれたアリシアは

ガリウス王の姿に変わって行きました。

 

「こんな感じかしら・・・」

と自分をキョロキョロと見回します。

「あ、いや、言葉使いも変えないといけないわね・・・」

 

「あ、あー、わ、私がハート国の王、ガリウスじゃ・・・ハッハッハー」

・・・・・?「こんな感じかしら・・・」

 

「と、兎に角、キャスパー様達を待って今後の事を考えなくてはいけないわね」

 

とアリシアはソファーに腰掛け大きなため息をつきました。

 

 

            LOST MEMENTO第5章~メルティー~完

 

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